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ロシア美術に興味がない方のために

 美術好きの私は世界の名だたる美術館を巡り、日本に来る海外からの企画展にも数多く足を運び続けている。結論として言いたいのは19世紀のロシア絵画、イギリス絵画が、歴史上において世界最高峰だということだ。
 最高峰とはレベルが高いという意味である。ダヴィンチのように貴重だったり、ピカソのように有名という意味ではない。フィギュアスケートでは技術点と芸術点を合わせて評価するという。絵画でいえば描写力と表現力がそれにあたる。世界には傑作が数多く存在するが、技術点と芸術点が高い作品が数多くあること、全体的なレベルが高いことを指して、世界最高峰と言いたい。

 絵画の技術とは何だろう。筆一本でキャンバスに布を柔らかく描く、石を固く描く、透き通るような指を描く、遠近法、筋肉の付き方、どれも数年かけて学び、技術を習得しなければできることではない。技術面だけでいえば、さっと5分くらいで手指を描いたような印象派絵画の技術が劣ることは明白だ。
 絵画の芸術性とは何だろう。作品を見る者は何かを感じる。安心、恐怖、静寂、など様々な感情を受ける。作者はテーマ、構図、色彩、想像力を駆使して表現する。風景、静物といったジャンルだけでなく、幻想、神話、現代社会、何を描いてもいいのだ。たとえ技術の高い絵でも、テーマが退屈だと感銘を受けないし、工事現場の絵では美しさもない。

 技術の発展とともに、画材も発展し様々な色を表現できるようになった。宗教画、肖像画だけでなく、表現するテーマが時代と共に自由になってきた。絵画の発展は19世紀のヨーロッパにおいて最高潮を迎える。そんな中で画家にとって最大の敵、写真が出現する。努力しても技術において写真には敵わなくなったため、画家は写真にはできないことを模索するようになる。写真にはない光や風を表現しようとしたモネなどの印象派。ロシアではカンディンスキーが抽象画を発表した。以降、絵画の可能性を模索し、新しい表現を生み出した者が評価されていくことになる。

現代絵画を否定するつもりはない。19世紀に限らず素晴らしい作品は数多く存在する。しかし、人類の歴史上最高峰の絵画が数多く鑑賞できるのが、サンクトペテルブルクのロシア美術館、モスクワのトレチャコフ美術館なのである。
 あなたが、絵はわからない。と思われるのも仕方がない。現代は人が見たこともないアイデアや、注目される絵画が評価される時代だからである。下手な絵でも有名人が描けば注目されるし、評論家がよいといえば、評価される絵になるのである。
 しかし、絵はわからない。興味がないと思われているあなたも、実は各々美術的な感覚を持ち合わせているのだ。物を買う時、値段は別として適当に購入しているわけではないはずだ。自動車や服を買うとき、色やデザインを気にするだろう。格好いい。かわいい。という感覚は誰でも持っているし、人によって違う。靴、ペン、髪型に至るまで人は美的感覚を持って自分で選んでいるのだ。自分の外見に無頓着な人でも、豪華な仏壇を買ったりする例は枚挙にいとまがない。
 まず美術館に行って、自分が恰好いいと思う絵画を探してもらいたい。その時、画家の名前は見ないでほしい。余計な先入観が入るからだ。わからなければ消去法でもいい。2つのうち、こちらの方がましだ。という感覚でもいい。好きな絵を選んでから初めて画家の名前を確認すればよい。それがあなたが好きな画家になる。その画家も、その絵を描くとき恰好いいと思って描いている。つまりあなたと同じ感性を持っているのだ。その画家の名前を全く知らなかったとしても、記憶して帰ってほしい。インターネットでその画家の他の絵画、略歴を調べてもいいし、自分のSNSに好きな画家として公表してもいい。すると日本に存在する、その画家の他の絵を見たくなるかもしれないし、それまで気にも留めなかった駅に貼られている展覧会広告に、その画家の名前を発見するかもしれない。5分でも美術を考える時間ができると、そのうちカーテンの柄が気になったり、インテリアや小さな絵を買って、飾りたくなったりするのだ。
 さらに感性が育ってくると、町の美しくないものが気になってくる。もしあなたがサッカーの試合を見て、このチームのユニフォームはダサい、弱そう。といった気持ちになるなら、感性が訴えていることになる。美術品を見ても自分なりの評価が下せるだろう。

 東京だと、上野の国立西洋美術館。八王子の富士美術館で良い絵画に出会えると思う。
そして、いつかサンクトペテルブルクのロシア美術館、モスクワのトレチャコフ美術館に行ってもらいたい。
 ロシアのエルミタージュ美術館は宝飾品や西洋絵画、世界中の宝を集めた宝物殿である。その点では大英博物館やルーブル美術館も似ているといえる。彫刻に関してはイタリア、フランスのほうが傑作は多い。重要文化財的な価値といえばイタリアの美術館が傑作は多い。

だだ世界最高峰の19世紀絵画が多い。という観点からすると、サンクトペテルブルクのロシア美術館とロンドンのナショナルギャラリーなのである。モスクワのトレチャコフ美術館でもよい。一度は見ておくべきだ。圧倒される感覚を味わうだろう。そして味わった感覚をあなたの子供や親しい人に伝えてほしい。恰好いい絵があった。と一言だけでもいい。あなたが美術に興味がない理由は、親、友人、社会に原因があるからだ。あなたがこの世からいなくなっても、その絵は存在し続けるので子や孫もいつかは見ることができるだろう。

 個人的にはスリコフ、クラムスコイ、レーピンの絵に感銘を受けるが、あなたと同じ感性を持った絵画は自分で探してもらいたい。画集や画像では絶対に味わえないので、実物を見るべきだ。

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